9/30/20メルマガ第11号・かつお節の包装をラマン顕微鏡で見ると?

先日、プラスチックを研究する大学教授から「食品の包装のプラスチックは多層になっている」と聞きました。それぞれ「酸素を通しにくい」「突き刺し防止」などの機能を持つプラスチックが、何重にも重なっているというのです。しかし、いくらじっくり観察しても透明な1枚のシートにしか見えません。そこで「ラマン顕微鏡なら見分けられるかも」と思いつき、ナノフォトンの社員に測定をお願いしてみました。(メルマガ編集長・根本毅/フリーライター)

食品を包装する多層のプラスチックは「ラミネートフィルム(多層性フィルム)」と呼ばれ、高機能化が進んで多くの製品で使われるようになっているようです。

その教授には、プラスチックのリサイクルについて話をうかがっていました。多層性フィルムは異なる種類のプラスチックが重ね合わされているため、そのままプラスチック製品の原料に再生する「マテリアルリサイクル」は困難なのだそうです。教授は「それがリサイクルの大きな課題の一つ。食品メーカーにとっては安全も大事だし、非常に難しい問題」と話していました。

さて、ラマン顕微鏡での測定です。今回のサンプルは、かつお節の包装にしました。削り節を小分けにしているパックです。ナノフォトン社に「測定したい」と伝えたところ、サービス担当の島端要典さんが2種類のフィルムを準備してくれました。

測定したかつお節の包装を手で示す島端要典さん。奥にあるのが測定に使ったレーザーラマン顕微鏡「RAMANtouch」

ここで、ラマン顕微鏡のおさらいをしておきましょう。分子にレーザーを当てると散乱光が出てきます。散乱光の大部分はレーザーと同じ波長ですが、異なる波長の光もわずかに含まれています。このわずかに出る光は「ラマン散乱光」と呼ばれ、さまざまな波長の光が含まれます。ラマン散乱光を波長ごとに分離して示したグラフ(スペクトル)は分子によって特徴が異なるため、ラマン散乱光を分析すればどんな分子かが分かるわけです。ラマン散乱光の特徴を基に分子を色分けし、顕微鏡の視野で分布を見えるようにしたのが、ラマン顕微鏡です。

かつお節パックに戻ります。測定には、高い空間分解能かつ高速で測定できるRAMANtouchを使いました。パックのフィルムを小さく切り、スライドガラスに載せて装置にセット。後は、パソコンで操作をします。今回は層になっている状態を見たいので、深さ方向に測定します。サンプルを切らずに断層のイメージが見られるのも、RAMANtouchの特長の一つです。

RAMANtouchにサンプルをセット

「条件をセットした後に、測定開始ボタンを押せば自動で測定が始まります」と島端さん。さらに説明を受けている間に、約2分30秒で測定が終わりました。フィルム全体の厚さは約60マイクロメートルでした。

測定した分子のラマンスペクトルに特徴的なピークで色分けすると、きれいに3層に分かれて見えました。プラスチックの種類は、上(パックの外側)から順にポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン。島端さんが事前に測定し、数万のラマンスペクトルのデータが登録されたスペクトルライブラリで検索した結果、分かったのだそうです。

測定の結果、3層構造と判明
3層それぞれのラマンスペクトル

もう1種類のかつお節パックのフィルムを測定すると、上がポリスチレン、下がポリエチレンの2層構造。メーカーによってフィルムの組成が異なっていることが分かりました。

組成と構造が異なる2種類のかつお節パック。一方は2層(左)で、もう一方は3層

透明なプラスチックのシートも、ラマン顕微鏡で測定すると全く違って見えます。多層と聞いただけなのと、実際に目で見るのとでは大違い。とても面白い体験でした。プラスチックって奥深いですね。この話題、もう少し続けます。

9/16/20メルマガ第10号・ナノフォトンで働く若手社員(下)

「科学者の会社」であるナノフォトンに、今年は2人の若手が加わりました。それぞれ理工学研究科化学専攻で修士号、理学研究科宇宙地球科学専攻で博士号を取得しています。いずれもサービスを担当し、納品や定期点検、修理などを担います。2人を紹介します。

サービス担当、島端要典さん

島端要典さん

サービス担当の島端要典さん(27)は、関西学院大学大学院理工学研究科化学専攻で修士号を取得後、分析機器のメンテナンスを行う企業に就職。約2年後の今年5月、ナノフォトンに転職しました。

──大学ではどんな研究を?

生命の最小単位である細胞にものすごく興味を持ち、それを生きたまま測れる分光分析という技術があることに感動しました。学部4年の時、細胞と分光分析の両方ができる研究室が新設されるというので、そこに入りました。何も装置がない状態からのスタートです。修士課程も含め1年半くらいかけてラマン分光装置を構築し、生きた細胞の温度測定などを試みました。

──そして就職し、約2年で転職を決意しました。

ラマンに強い会社に就職したものの、ラマンや分光分析とは関係ない担当でした。そのような中、日々業務をこなしていましたが、自分が本当に何をしたいかを考えると、どうしてもラマンに戻るのです。

規模が小さい企業が性に合っていると思い、転職を決意してナノフォトンの面接を受けました。新卒の時からナノフォトンに関心があったのですが、ナノフォトンは社員を募集していなかった上、数百人規模の会社だと思い込んでいました。

──入社して、どうですか?

最高ですね。発想力や仕事の速さ、ラマン分光に関する知識の量など、メンバーのレベルが高い。また、責任を持って自分の仕事をする方しかいません。

──担当はサービスですが、大学では装置の構築や分析をしていたのでは?

私には、分光分析のプロフェッショナルになるという目標があります。転職前の担当は分析でした。分析だけ、製造だけでは視野が広くならないので、サービスと営業をやりたいと面接で希望したんです。市場のニーズは外に出ないと分かりません。サービスは装置の中身をより具体的に知ることができます。ラマンについていろいろと知りたいんです。

──分光分析のプロフェッショナルの他に、将来やりたいことはありますか?

バイオ系、特に細胞に特化した革新的なラマン分光装置を作りたいですね。

サービス担当、森藤直人さん

森藤直人さん

同じくサービス担当の森藤直人さん(28)は、大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻で博士号を取得し、今年4月に入社しました。

──大学では何を学んでいましたか?

学部で生物を学び、大学院から分野を変えて地球科学専攻に。油田に興味を持っていたため、大昔の環境を模擬する「熱水その場観測用セル」という容器を設計し、粉状にした岩石や微生物そのものを入れて200度の熱水環境での変化を赤外顕微鏡などで観測したりしました。珪藻(けいそう)という微生物は石油の主な起源生物であると言われていて、実際に珪藻から石油のような物質になる過程を見たかったのです。

──ラマン顕微鏡も使ったのですか?

研究室にラマン顕微鏡はありましたが、レーザー光のパワーが強すぎるなどの事情で本格的には使えませんでした。珪藻は立体構造がとても複雑で、ナノフォトンのRAMANtouchを使ったらもっと詳しく調べられたかもしれません。ラマン顕微鏡が使えたらなあと思っていました。

──ナノフォトンへはどのような経緯で?

ずっと取り組んできた分光に関わる仕事をしたいと考えていると、研究室の教授が「すごい分光器を作っている会社がある」と。構造が複雑で規則性がない岩石を高い分解能でマッピングできる。かつ深さ方向にも分解能が高い。岩石や化石、隕石を調べるのにうってつけな顕微鏡だと言われました。

──それで応募したのですね。面接はいかがでした?

サービス担当で採用しても、将来は製造や開発などでも働いてもらいたいと言われました。いろいろなことができるポテンシャルを感じ、入社を決める決め手となりました。今、サービスの他にも部品の組み立てや開発会議への出席などいろいろなことに関われています。大きな喜びです。

──将来はどんなことがしたいのですか?

日本の研究環境が良くなるように貢献できたらと考えています。研究者は忙しいので、手軽に高度な測定ができる装置の開発も重要です。ナノフォトンなら企業や大学の研究のサポートができると考えたのも、入社を決めた理由の1つです。

2人とも「分光分析のプロフェッショナルになりたい」「日本の研究環境が良くなるように貢献したい」と夢を語ってくれました。ナノフォトンの未来を支える人材に育ってくれると思います。ひいては、日本の科学技術を支える人材にもなるでしょう。さらなる成長に期待します。(メルマガ編集長・根本毅)

採用情報

ナノフォトンは、技術、営業、管理の各部門で正社員やアルバイト・インターンの募集をしています。詳しくは求人・採用情報をご覧ください。

9/2/20メルマガ第9号・ナノフォトンで働く若手社員(上)

大阪大学から生まれたナノフォトンは「科学者の会社」の性格を色濃く持ちます。社員に理系出身者が多いのも特徴の一つ。今回紹介する若手2人も工学部出身で、それぞれ製造とR&Dに所属しています。ナノフォトンでの仕事の様子を語っていただきました。

製造担当、高木勇樹さん

高木勇樹さん(左)

製造担当の高木勇樹さん(28)は大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻の博士前期課程を修了し、大学院に所属したまま昨年4月に入社しました。学部生の時から5年間、ナノフォトンで学生アシスタントをしていたため、会社のことはよく知っています。職場について「新しいことをやっていこう、という雰囲気がある」と話しています。

──学生アシスタントを始めたのは?

機械設計のアシスタント募集を知ったのがきっかけです。学部生の時、ロボット製作を行う団体に所属していて、そのスキルが生かせると思い応募しました。

僕にとって機械設計は、息をするのと同じように自然にできる作業です。もともとメカトロニクスが好きで、3歳の頃から工作をしたりしていました。

──今の仕事の内容を教えてください。

機械電気の設計と、部品の調達と、製造管理をやっています。
設計は、ラマン顕微鏡の部品一つ一つの形を決めていく、という言い方が分かりやすいかもしれません。形を決めていって、組み立てを考えていきます。

──アシスタント時代も含めて6年以上ナノフォトンで働いていますね。会社の雰囲気はいかがですか?

がんがん新しいことをやっていこう、というスタンスだと思います。ただ、僕はわりと物事をどんどん変えていこうと思うたちなので、「ちょっとやりすぎだ」と言われることはあります。提案は聞いてもらえますが、お客さまに迷惑をかけてはいけませんから「それをやる前に検証してや」と注意されるんです。

また、職場はフラットな関係です。もちろん上司が最終決定をしますが、上意下達ではなくネットワーク式に回しています。

──ナノフォトンで働くのは、どんなタイプの人が向いているのでしょう。

新しいことをどんどんやり、自分がルールを作っていくくらいの意気込みを持っている人ですね。会社は意見を聞いてくれます。もちろん内容次第です。

ソフトウエア開発、織田祐真さん

織田祐真さん

ソフトウエア開発を担当する織田祐真さん(24)。大阪大学工学部応用理工学科を卒業し、今年春に入社しました。学生アシスタントからの社員採用です。趣味のプログラミングの技術を仕事に生かし、楽しく働いています。

──織田さんもナノフォトンでアシスタントをしていたのですね

電子工作やプログラミングをするサークルの先輩から「プログラミングのアシスタントで人が足りないから入らないか」と紹介してもらいました。プログラミングは、大学に入ってから趣味として本格的に始めていました。

──プログラミングの面白さは何ですか?

既存のソフトウエアで、かゆいところに手が届かないと感じることがあると思いますが、それを自分の望むように作れるのは魅力の一つです。さらに、ジグソーパズルやレゴブロックで遊ぶのと近い感覚があります。

──趣味を仕事にできて良かったですね。

好きなことをやっているので、仕事はとても面白いです。基本的に、プログラミングは一から書くのではなく、自分の知識のストックを組み合わせて目的のものを作ります。「こういう仕様のものを作りたい」という時に、どう構築しようか考えるのはやっぱり楽しいですね。

──会社の雰囲気を教えてください。

和気あいあいとして、技術職の人が本当に技術が好きなんだなという印象がアシスタントの時から強かったんです。その印象は今も変わりません。

座席がアプリケーションエンジニアの2人と同じ島で、他の会社だったら接点がないような関係なのに毎日意見交換している。そういうのも楽しいです。

また、大企業のように、何か意見を出す場合に書類が必要だとか、何人も通さないといけない、ということがありません。やりやすいですね。

──今後、やりたいことは?

プログラムのソースコードの保守性を良くしたいと考えています。例えば、ある機能を足してほしいと依頼があっても、今は変更が想定されていない設計になっています。ソースコードが素直じゃないんです。ごちゃごちゃしていると、問題が起こった時にどこで問題が起きたのか判別しにくい。それを改善するつもりです。

可能性あふれる若い方から話を聞くのは楽しいものです。今回インタビューした2人は専門性があり、それなりに責任を負っているためか、仕事に対する自信をひしひしと感じました。2人とも「他の会社は知らないから比べられない」と話していますが、大企業では得られない経験を通じてたくさんのことを学んでいるのでしょう。次回は今春入社した2人を紹介します。(メルマガ編集長・根本毅)